脳内ロマンス 吉田重人

(2012年6月13日 記事)

紙/水性ペン
216mm×165mm

  ラポラポラの活動を続けていると、とても不思議な日がやってくる。まるでパラレルワールド(異次元の世界)が開いてしまったように、、、。

 一週間前、事務所に聞き取りにくいか細い声で「吉田重人」と名乗る方から電話があった。「絵を描いているから、見て欲しい」という内容だった。
 これまで、このような依頼の電話は幾度もあって、作者である本人が「見て欲しい」という作品は、見せて頂いても私が興味を持てるケースはほとんどない。正直言って気乗りしなかった。とは言うものの、「見て欲しい」というご本人のご希望を損ないたくはないので、必ず拝見させて頂く。っだがこの数日間は仕事の都合もあって、すぐにお伺いする事が出来なかった。すると吉田さんからは毎日、電話が来るようになった。とても聞き取りにくいのだが、電話の内容は描いた作品の説明のようだった。きっと拝見に行かなくては気が治まらないご様子かと思い、急遽お伺いした。

 吉田さんは旭川にお住まいなので、車で20分とかからないうちに指定する場所に着いた。そこには年配の方がスーツを着て立っておられたので。「吉田さんですか」とお訪ねすると、小さくうなずかれた。電話のあの積極的な印象はまるでなく、何とも不思議だった。導かれるまま吉田さんの自室に通された。テーブルの上には30枚ほどの作品が置かれていた。

 一枚一枚作品を拝見させて頂く。一気に吉田さんのイメージしている世界観が作品から伝わって来て、その世界にグイグイ私を引きつけた。このワクワク感は久しぶりだった。

 60歳になる吉田さんは、フランス映画などの恋愛をテーマにしたものがお好きなようで、作品にもロマンスの雰囲気が漂っている。「頭の中にあるイメージを紙に写している」と言われているように、描かれた作品は映画のワンシーンを切り取ったかのように物語性に富んでいる。

 写真の作品だが、中央に全裸のブロンド女性が立っていて、その背後には鏡があり、女性の後ろ姿が映っている。また、鏡には絵筆を持った画家の姿が小さく描かれているので、この女性がヌードモデルである事が分かる。脱いだ服や下着が叙情的でこの画家とモデルとの関係性を漂わせている。印象的なのは女性の身体表現。赤と緑の入り交じりとハートマークが何とも奇妙だ。

 吉田重人さんの脳内ロマンスの投影ということは、、、「続きが見たーい」と思ってしまうのだが、野暮はいけませんね。フランス映画のようにオシャレにfin。

(あさひかわ新聞 6月12日号 連載『アールブリュットな日々」より)