果てしない

(2012年8月20日 記事)

 旧旭川温泉の改修。
それはまさにネバーエンディングなストーリーなのです。

男湯、女湯、ボイラー室、脱衣所の空間は、鉄骨で出来ていて、
その空間の仕切りはコンクリート壁になっている。
この壁は壊しても建築物の強度には何ら問題ないようなので
壁を取っ払って、大きな空間を作る事とした、、、、、
が、これ!めちゃくちゃ大変!!

鉄骨で足場を組んで、ハンマーひとつで渾身の力を振り絞って
壁を叩いて叩いて叩きまくる。
タイルが貼ってあるので、なかなか壊れません。

足場を増設。ちなみにすでに、ここで2日目です。

もう、汗がだらだら。炭坑で石炭を掘っていた労働者の苦労を知りました。
とにかく、ガンガンハンマーを振って壊し、ようやくひとつの壁を壊しました。
3日でようやくひとつの壁が終了。

まだまだ、壊さなければならない壁が立ちはだかっています。
「壁を壊して前に進む!ど根性だ。それが人生!」
と自分で自分を励ます。

この空間には薪窯を制作の予定だが、
この調子では、いつになることやら、、、、

シャウトをアートに込めて 藤井晋也

(2012年8月16日 記事)

「無題」藤井晋也 2011年 720mm×510mm クラフト紙 ペン

 滝川市在住の藤井晋也さん(42)から「新作が出来ている」と電話があったので、久しぶりに訪ねてみた。

 藤井さんは、私が代表を務めているNPOラポラポラが道立旭川美術館で企画主催した「北海道のアウトサイダー・アート」(09年)にご出展頂いた作家で、緻密な画風に注目が集まった。その後も札幌の若手アーティストたちのグループ展に招待されるなど活躍している。

 藤井さんの画風は緻密ゆえに制作に時間がかかり、1枚を完成させるのに約三カ月を要する。作品が溜まったらぜひ個展をしてみたいと、私は切望していた。
 私と藤井さんは年齢が近く、同じ時代を過ごして来ただけに、彼との話は大変興味深い。今回の訪問では時間をかけてじっくり彼と話した。

 藤井さんは小学校、中学校、高校で、イジメにあい、心の中にどうしようもない怒りが渦巻いていた少年時代を過ごした。

 相手の事を理解せず、言葉や行動で精神を傷つけて反応を楽しむような卑劣な行為が今も昔も学校や社会にある事はまったく残念だ。
 自分と違っている考えや感性、行動を奇異と捉えず、相手の内面をじっくり見ることが出来れば、自分の価値観に無いそれらの行為を理解し、新しい発想や世界観を得られるのに、まったくイジメとは、もったいない関係性だ。
 多様な価値観を認め合い、発展させてこそ人間社会は豊かになると私は思っている。

 藤井さんがアートに心を寄せたのは、行き場の無い自分の想いを吐き出したかったからだ。  
 高校時代にマンガ雑誌の公募にシンボルマークのデザインがあり、応募したところ紙面に掲載。それがきっかけとなってデザインに興味を持ち、高校卒業後は北海道造形デザイン専門学校に進学し、商業デザインを学ぶ。
 卒業後は海外での創作活動を夢見た。資金調達のために愛知県の自動車組立工場をはじめ札幌や東京でガードマンをしたが、不規則な生活と創作活動で体調を悪くし、ついには精神が不安定となり統合失調症となった。自宅での療養を経て、ようやく07年から少しずつ絵を描けるようになったという。

 藤井さんはCDやラジオから流れる楽曲を聴きながら制作する。「音の波動から生まれてくる線」で構成した文様は、バリのイメージ、ロボット、昆虫、植物、貝殻など様々なものと組み合わされている。

 以前に拝見したものと比べると、さらに表現が固まって、独自の世界がよりリアルになっている。「どんどん聴覚が研ぎ澄まされるのです」と彼は言う。

 芸術によって精神世界で真の自由を獲得しようとする藤井さんの姿勢を私は尊敬している。

 海外での個展という彼の夢を実現させたいと、私も密かに強く思っている。

(あさひかわ新聞 2012年8月14日号 工藤和彦「アール・ブリュットな日々」より) 

サボア・ヴィーブル 初個展の思い出

2012年 東京・六本木のサボア・ヴィーブルさんで個展を開催しました
今回で10年目となりました。

11年前の秋にここに初めてやって来た日が懐かしい。

2001年の秋、、、僕は益子の陶器市に北海道から参加していました。その当時は、北海道内の陶器市の他に益子の陶器市にまで、足を伸ばしていたんです。

車にタイヤがへこむほど陶器を満載して、春と秋の陶器市に7年ほど通っていました。
各地の陶芸家を受け入れてくれる益子の人達の度量の大きさには本当に感謝です。

益子の陶器市では、地元や全国各地の陶芸家との交流もあり、とてもエキサイティングで楽しい時間を過ごす事が出来ました。

2001年秋の陶器市の帰り、、、過酷な運搬を強いられた車が、とうとう走行中に動かなくなってしまいました。仕方なくレッカー移動して近くの修理工場で見てもらうと、部品交換の修理が必要との事。

修理には1週間ぐらいかかるらしく、仕方なく修理をお願いし、荷物をまとめて東京に向かいました。この際、東京の有名ギャラリーに営業に行ってみようと思い立ったからです。

そこで、訪ねたのがサボア・ヴィーブルさんでした。

すでに、納得いく作品はほとんど益子で販売してしまっていたので、手元に残った僅かをお見せしてもダメかな、、、、と思いましたが、勇気を出して作品を見て欲しいとお願いしました。

運のいい事にオーナーがおられ、すぐに作品を見て頂くことになりました。サボア・ヴィーブルさんのお店の前には、野外テーブルがあって、その上に作品を並べる、、、、
作品を挟んでオーナーと向き合う。緊張の場面。

案の定。作品を見た瞬間からオーナーは様々な指摘を始めました。
そのひとつひとつが的確で、どれも参考になるご意見でした。
説得力があって、そして時に発展的に、当時のうつわ事情を交えたお話。

突然来た若い陶芸家に対して、これほど熱く対応して頂けた事にとてもビックリしていると、
「ロクロはある程度出来るようだね」と言われ、まじまじとうつわを眺めてから

「指摘した事をしっかり考えて作ってみてくれたら、2ヶ月後に個展のスケジュールに空きがあるので、やってみないか。」とおっしゃいました。僕は一瞬、唖然としましたが、即答!
「やらせて下さい」と声を振り絞りました。

打ち合わせを済ませ、帰ろうとするとオーナーが、「チャンスをモノに出来るかは君次第だからな」と声をかけてくれました。
僕の中には妙な自信が込み上げて来て、震えが止まりませんでした。
こういうのが武者震いなんだなとその時思いました。

サボア・ヴィーブルでの初個展は同時に東京でも初めての個展でしたので、初日を迎えるまでのプレッシャーは相当なもので不眠不休で制作をし、肌は荒れ、耳たぶが切れて血を流してしまうほどでした。

「あまり沢山持って来なくてもいいよ」と言われていたので、加減して個展の搬入をすると、梱包したダンボールから出てきた作品を見てオーナーが「今すぐ家に電話して、工房にあるものをとにかく送ってもらうように頼みなさい」と言い出されました。

あの時はとっても嬉しかった。

この10年、様々な助言をサボア・ヴィーブルさんから頂きました。
僕の考え、方向性を考慮してのアドバイスに感謝しています。

「やるべき事はまだまだ沢山ある」
10年経っても、サボア・ヴィーブルさんに来る度に野外テーブルを見てはそう思い起こします。

ちなみに、東京に来るきっかけを作ってくれた車は、
修理工場からの帰路、数キロで再び故障。廃車となりました。
これで、その秋の陶器市での売り上げは、消えてなくなってしまいました。

ハリケーンスパイラル

 8月3日からいよいよ東京、六本木 AXISにある
サボア・ヴィーブルさんでの工藤和彦個展が始まります。

サボア・ヴィーブルさんでの個展(以下サボア個展)は2002年が始めで、
かれこれ、お付き合いも10年となりました。

今回の展覧会の案内状は写真家の木村文吾さんに撮影頂きました。
スッキリと碗が2個
こちらです。

おや!と思った方はスゴイ!

この構図は2002年のサボア個展第1回目の案内状の構図と同じなんです。
それはこちらです。

映っている碗も黄粉引と刷毛目。
手法も技法も粘土も焼き方もさほど変わりません。

しかし、当然ながらまったく同じではありません。

物事はたいてい年月をかけて回っています。
太陽の周りを回る地球。
木が育ち、大木になって倒れ、朽ちて土となって、森の木々を育てる循環
幼虫からさなぎへ、そして蝶になり、交尾して卵を産んで死す、生命を繋ぐサイクル。

森羅万象が変容しながら循環するのです。
ただ、その循環は円のようにまったく同じように、元に戻るのではなく、
スパイラル(螺旋構造)のようになっているのでしょう。
それによって、物事は進化して行く訳です。

最近の研究では宇宙は誕生してから、どんどん膨張していると言います。
ですから、螺旋構造はどんどん大きな軌道を描いていく
ハリケーン型スパイラルになっているのかもしれません。

今回、碗を作る時そんな事を考えました。

粘土の玉が、蹴りロクロの回転と、手のひら、指の力によって少しずつ広げられ
下から上に向かって碗のかたちになって行きます。
まさにハリケーン型スパイラルだなーと

碗の中に宇宙を作っているんだという感覚を持ちました。

毎度同じような事を続けていても10年で一段上がって
次の10年を大きな軌道で回ってみたい。
そんな願いをもった今回の個展です。

3日、4日、5日、6日は会場に工藤がおりますので、
お気軽にお話しかけ下さい。話し好きです。

2012年8月3日~11日
サボア・ヴィーブル
東京都港区六本木5-17-1 AXIS 3階
TEL 03-3585-7365
 営業時間 11:00-19:00