各地に広がるアール・ブリュットの輪

(2012年3月23日 記事)

 昨年のクリスマスに高知まで行った。アール・ブリュットを専門とする美術館のオープニングがあったからだ。この美術館の開設に当たっては、全国各地のアール・ブリュット関係者を招集して1年間もの検討会が行われ、私もそのメンバーとなっていたこともあって、お祝いに駆けつけた。

 一昨年、パリで行われた「アール・ブリュット・ジャポネ展」が大成功を納めたが、同時に価値が高まった作品群の行く末を案じることとなった。当初は作家に作品を返却することとなっていたが、それでは作品が散逸してしまう。また、作品そのものの保存管理が作家にとって負担となっているケースが多かったので、日本のアール・ブリュットを支援してきた日本財団が主体となって収蔵し保存管理をすることが決まった。

 美術作品を保存管理するというのは簡単ではない。永久にとはいかないまでも、出来る限り現状を維持しなければならないのは大変なことだ。温度、湿度の管理から、作品のダメージを抑えるような展示の期間や配置の配慮。当然、年月が経てば修復作業も必要となる。

 日本財団が作品の保管をして美術館に貸し出すという形式の美術展は、埼玉県立美術館での「アール・ブリュットジャポネ展(凱旋展)」など、各地 で開催されている。さらにこのコレクションを最大限生かす方法として、大胆にも全国各地に美術館を創設しようという機運が盛り上がって、1年前に検討会なるものが出来たのだった。

 モデルケースとなったのは滋賀県の近江八幡市にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MAだ。現在の日本のアール・ブリュットシーンを切り開いた美術館である。古い町家を修復して活用しているところもユニークで注目を集めている。このように地域にある資源を生かした美術館開設をキーワードとした。

 高知に開設された美術館は「藁工(わらこう)ミュージアム」と命名されている。土佐漆喰の倉庫群は藁を保管するものだったらしい。この倉庫群をアートゾーンとして改修したほか、飲食やイベント・映画鑑賞に使えるスペースなども備え、充実した内容となっている。

 5月には宮崎駿監督作品の「崖の上のポニョ」のモデルになった広島の鞆の浦(とものうら)にも美術館がオープンする予定だ。今年、アール・ブリュットを巡る日本各地の旅を楽しんでみてはどうだろうか。
あさひか新聞 3月13日号「アールブリュットな日々」より
ボーダレスアートミュージアムNO-MA
高知藁工ミュージアムホームページ