旅の音楽家 丸山祐一郎

(2011年7月12日 記事)

13年前、旅のフェリーの中で、海を見ながらギターを弾いている不思議な人と出会いました。旅先での出会いは妙なもので、それ以来の長い付き合いとなりました。  

“旅の音楽家”だという丸山祐一郎さんは、ブラジルでボサノバギターを学び、その時に知った「ビリンバウ」という弦楽器の奏法もマスターしました。足を使った格闘技カポエラの伴奏に使われる、弓とひょうたんで出来た世界最古の一本弦の楽器です。

 ビリンバウによって民族楽器への意識が高まり、世界各国の楽器の収集、演奏を始めます。これによって他に類を見ないステージが確立されました。

 彼の音に対する執着は楽器創作にまで及んでいます。四本の空き缶からなる「水カンリンバ」もその一つ。空き缶の中の水が「コポコポ」と移動する音に加え、缶を弾く「チュイーン」という音が水に反響することを利用したものです。この楽器の作り方は公表されており、全国各地に愛好者が広がっています。

 人に音楽を聴かせるのは想像以上に大変なことだと私は思います。彼の依頼者は様々で、福祉施設だったり、小学校、ホームパーティー、1000人規模のコンサートなど、観客の年齢層が幅広いのです。雰囲気を察知しながら次の演奏を組み立てて、時には飽きさせないように小道具やマジックまで飛び出します。

 大道芸のような要素も出しながら相手に寄り添い、自分の方に引き込んで強いメッセージを伝えていく、それが彼の流儀です。「素敵な虹も、水がなくてはできません。水の音に耳を澄ますと、自然の素晴らしさ、命の尊さが聞こえてきます。さあ! 一緒に歌いましょう」。子どもも大人も、まるで魔法にかけられたように大合唱してしまいます。
 感受性の高い子どもたちは、すぐに丸山さんのことを大好きになります。それは彼自身が歳をとっても感性を磨き、自分にしかない世界観を構築し、ある意味わがままなくらい相手を引き込んで楽しんでしまうからでしょう。ガキ大将が遊び方を教えて人気者になるような感じかもしれません。
 私もこういう大人になれないものかと彼を見ているとつくづく思います。

(あさひかわ新聞 2011年7月12日発刊「アールブリュットな日々」より)
丸山祐一郎&こやまはるこブログ
水カンリンバの作り方(pdf)