シゲチャンランド

(2011年5月12日 記事)

 芸術家はアール・ブリュットへの理解が早い。創作に没頭するあまり周囲の物事への関心が希薄であった り、また逆に周囲の細かな事柄に対して執拗なまでに関心を持っていたりなど、芸術家もその要素を少なからず持ち合わせているからだろうか、アール・ブ リュットの作家の特異と思えるような行為、表現方法も少なからず理解する事が出来るのだろう。

 網走と釧路を結ぶ国道240号線で津別町 を車で走っていると、周囲の濃い森林の緑に対して、突如として出現する赤い建物の集落がある。屋根には「極楽美術館」と書かれ、何とも奇妙さを醸す。そこ が知る人ぞ知る芸術家の大西重成さんが主宰している「シゲチャンランド」である。

 広大な敷地に入ると数十件の建物があり、大西さんの作 品が無数に展示されている。大西さんは有名アーティストのレコードジャケットなどの商業デザインを手がけており、特に身近な素材を利用して立体造形を制作 し、写真に撮る手法は広く世間に知られている。10年前に東京から津別町に活動拠点を移した。

 大西さんの作品は流木や廃品などを使って いるものが多く、誰でも簡単に手に入る素材だけに真似出来そうに思うかもしれないが、そうはいかない。素材の特性を見極め収集し、何度も繰り返して配置や 配色のバランスを確かめ、細部まで気を抜かず精巧に仕上げている。作品にはうごめくような存在感すらある。

 シゲチャンランドの展示室に はそれぞれ「鼻」や「目」「耳」など身体の部位の名称が当てられている。「シゲチャンランド」そのものが大きな生命体になっている趣向だ。これはアール・ ブリュットの代表的な作家であるアロイーズが46年の歳月をかけて自分自身を創造主とした仮想宇宙を作り上げた事に通じる。

 「俺たちもアール・ブリュットにならないと」という大西さんの一言が私の胸に響いた。世界でもこれだけ勇猛果敢に「芸術の虜」となっている芸術家はいないだろうと私は思う。

 ディズニーランドよりシゲチャンランドが1000倍面白い!!

(あさひかわ新聞2011年5月10日号 工藤和彦の「アール・ブリュットな日々」より)
(写真:大西重成)

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